プロダクトマネージャーとUXデザイナーの間には摩擦が生じることがあります。これは事実です。最も成功しているチームであっても、ビジネス目標、ユーザーのニーズ、設計上のベストプラクティスのバランスをなんとかとろうとするあまり、緊迫する場面も発生します。そこに、厳しい締め切りや限られたリソースなどのストレス要因が加わると、さらに衝突が起こりやすくなります。
どうすればこれを回避できるでしょうか?
両チームが生産性と成果の向上を望む場合は、両者の共通点と主要なコラボレーションポイントを探る必要があります。さらに、プロダクトマネージャーとデザイナーの双方が、お互いのプロセス、ロジック、優先順位、ニーズに興味を持つことも大切です。
実は多い、デザイナーとプロダクトマネージャーの共通点
UXデザイナーとプロダクトマネージャーはどちらも、プロダクト開発において顧客志向のアプローチを重視しています。両者は、解決策に飛びつくよりも前に、購入者とユーザーのニーズを調査し、解決すべき問題の枠組みを把握します。
両者とも、まずは顧客ニーズの理解に努めますが、それぞれ異なる視点から問題解決に向けて取り組みます。プロダクトマネージャーは、市場の問題を特定し、ビジネスチャンスを定量化し、問題の解決策を講じるためのリソースを確保することに重点を置きます。一方、プロダクトデザイナーは、ユーザーの目標を理解し、ユーザーの目標達成を支援する理想的なプロダクトを創造することに重点を置きます。
どちらの役割も現在、組織内でより大きな影響力を持つようになりましたが、それには理由があります。両者はともに、市場における成功の主な原動力となるビジネスイノベーションと顧客体験の最前線に立っています。プロダクト開発プロセス全体で意図したコラボレーションを実現するために、これら2つの視点を統合することには、大きな強みがあります。これらの視点をうまく組み合わせると、プロダクトの成功をさらに促進できます。
その第一歩は、プロダクトマネージャーとデザイナーがお互いの実践方法や視点を学ぶことです。
UXデザイナーが重視すること
UXデザイナーにとってのモチベーションは、ユーザーの目標達成を支援することです。デザイナーは、ターゲットユーザーを深く理解することで、ユーザーにとって最適なソリューションとエクスペリエンスを創造したいと考えます。
ユーザーに関する真の理解
デザイナーは、設計パターンやベストプラクティスについての深い知識を起点とします。優れたデザイナーは、さらにその知識をユーザーに寄り添った共感的な理解と組み合わせます。これにより、ユーザーの立場に立った適切な設計を構築することができます。
デザイナーの共感力を引き出すには、ユーザーに関する正確なコンテキストが必要です。つまり、ユーザーの置かれた状況や目標、ユーザーのチームメンバーやコラボレーター、ユーザーの情報を使って実行すべき決定や行動を把握することが求められます。
そのため、デザイナーは発見プロセスの早い段階からの関与を求められることが多々あります。デザイナーを発見プロセスに関与させることで、彼らが必要とするユーザーに関する豊富なコンテキストを提供できます。この情報により、ユーザーにとって最善の利益を目的とした意思決定を下すことができるようになります。
解決策を講じる前に問題を把握する
デザイナーは、自らの取り組みの有効性を知るために、適切な問題に対処できているかどうか検証したいと考えます。彼らは、革新的な解決策につながるアイデアを得られるよう問題を把握する特殊なテクニックを持っています。巧妙に枠組み化された問題を起点とすることで、デザイナーは自らの創造性を発揮できます。したがって、彼らはプロダクトマネージャーと協力して、市場における問題を枠組み化し、洗練させることに大きな価値を見出しています。
複数の潜在的な解決策の探求
デザイナーは実験者です。彼らは、最初に思いつく解決策が最善であることは稀であると知っているため、多くのアイデアを生み出せる自由が与えられたときに目標を達成できるでしょう。ただし、単に試行錯誤すればよいというわけではありません。デザイナーは、自分ひとりで、もしくはチームと協力して代替案を探求・生成・評価するテクニックを持っています。プロダクトマネージャーは、このテクニックを活用し、関係者間の主要なコラボレーションポイントとして使用することを検討すべきです。
ナラティブとストーリーテリングの開発
デザイナーは、ユーザーのプロダクトやフィーチャーとのインタラクションを再現するストーリーを構築します。こうしたナラティブは、プロトタイプを作成する最も簡単な方法です。デザイナーは、プロダクトがユーザーの問題解決をどうサポートするかを説明したり、複数のフィーチャーを一貫した全体像へと組み込んだり、他者からのフィードバックを引き出したりするために、ストーリーを組み立てます。プロダクトマネージャーは、このようなプロダクトのナラティブを活用することで、プロダクト構築に必要なリソースを投入する前に、コンセプトに関するユーザーフィードバックを収集できます。
フィードバックの収集とユーザー体験の向上
デザイナーは、解決策のブラッシュアップを通じてユーザーのニーズに可能な限り応えられるよう、設計に関するフィードバックを求めます。ユーザーのコンテキストや課題に基づく生産的なフィードバックは、デザイナーがより強力な解決策を講じるのに役立ちます。設計プロセス全体で実際のユーザーからフィードバックを得る時間を予定しておくことで、自らの解決策が市場における問題に適切に対処していることをチームが確信できるようになります。
プロダクトマネージャーが重視すること
プロダクトマネージャーの責任範囲や働き方は実にさまざまです。組織によっては、ビジネスストラテジストとして従事したり、市場調査や関係者間の合意形成を担ったり、プロダクトデリバリーマネージャーの役割を果たしたりします。通常、プロダクトマネージャーは複数の責任を同時に担う必要があります。さらに、問題の枠組み化、ビジネス戦略やイノベーション、市場理解に関する専門知識を有する場合が多いです。デザイナーは、時間をかけてチームのプロダクトマネージャーを知り、彼らがもたらす独自のスキルを理解する必要があります。
ビジネスの成果とユーザーの期待のバランス
デザイナーがユーザーの視点に基づいて行動するのに対し、プロダクトマネージャーは市場戦略とビジネス成果の視点に立つ傾向があります。プロダクトマネージャーが達成したいビジネス目標を理解することは、デザイナーがユーザーのニーズに対処できる解決策を適切に特定することに役立ち、さらにビジネス目標の達成につながります。
データと戦略に基づく意思決定の優先順位付け
プロダクトマネージャーは、対処すべき問題に優先順位を付け、潜在的な解決策を選択する際に、さまざまな変動要因を考慮します。ほとんどの場合、市場データ、ビジネス目標、ユーザーのニーズ、技術上の考慮事項などが勘案されます。経営方針に基づく意思決定を行う場合も、より協調的なアプローチを取る場合もあります。いずれにせよ、実際のデータに基づいて慎重な意思決定を行います。プロダクトマネージャーは、意思決定の指針としてユーザーや購入者の調査を頻繁に実施します。
市場における優先順位付けをより深く理解するために、デザイナーは、市場の問題に優先順位を付けるプロダクトマネージャーのアプローチに真摯な関心を示すとよいでしょう。購入者に対して実施した調査や考慮すべき重要なデータについて尋ね、調査データの収集や意思決定プロセスへの支援を申し出てください。
プロダクト開発プロセスのこの段階からコラボレーションを行うことで、デザイナーは必要とする豊富なコンテキストを得られ、プロダクトマネージャーは先々のコミュニケーションにかかる労力から解放されます。全員が足並みを揃えて取り組めるようになります。
働き方
プロダクトマネージャーにはそれぞれの働き方があります。あまり干渉せず、問題を提示した後は、解決策の構築をデザイナーに任せる人もいます。一方で、自らインターフェースのスケッチを作成する人もいます。コラボレーションの方法について事前に合意しておくことは、信頼に基づく協力関係を築く上で有効です。
プロジェクト開始時に、お互いの働き方について積極的に話し合う機会を設けましょう。重要なプロジェクトで必ず発生する衝突への対処法についても協議してください。このような話し合いは、プロジェクトの進行中よりも開始前に行う方が簡単です。たとえば、以下のようなポイントを詳しく計画しておく必要があります。
- ユーザーにとって最適な解決策がビジネス目標に適わない場合、またはその逆の場合の対処
- プロダクトとデザインがこの問題に与える影響
- 解決策を構築するための手順
このようなトピックを話し合うのは難しいかもしれませんが、事前にこれらの問題に対処することで、潜在的なストレスを最小限に抑え、仕事上の関係性を強化できます。
コラボレーションの在り方の拡大
お互いを理解する最良の方法は、より意図的に協力することです。プロセス全体を通じて、コラボレーションするための余地を一貫して設定しましょう。また、プロダクトライフサイクル全体にわたって連携するために必要なツールを活用してください。
より深いコミュニケーションとアイデア共有のための仕組みとして、コラボレーションポイントを設けます。その上で、有意義なコラボレーションに努めましょう。過剰なコラボレーションの泥沼にはまらないよう、パートナーシップに適した歩調を意識的に作り出してください。
衝突はもちろん楽しいものではありませんが、プロダクトのより良い結果につながる可能性があることを忘れないでください。優れた成果は、多様な視点から圧力がかかることで生み出されます。衝突の原因を深く掘り下げて理解することで、多くの場合、ビジネスの目標とユーザーのニーズが理想的に交わる解決策へと近づくことができます。衝突の解消には、信頼感、透明性、コミュニケーション、そして効果的なコラボレーションが求められます。人間関係の構築を目的とした意図的なアプローチを取るためには、事前に多くの時間と労力が必要となるかもしれませんが、長期的に見れば大きな見返りが得られるでしょう。